音楽劇『ファンファーレ』あらすじ【その1】

あらすじ第一弾を公開します☆☆

【はじめに】

世間はでんでバラバラで、でたらめだ。

この物語の世界は、私たちが知っているのとは大きく違う。
そこは、現代でも、未来でも、過去でもない。
星は、象と亀と蛇で、できている。言語も、体も、音も、私たちのそれとは、ちぐはぐで、統一性はない。私たちが知っている名前、道具が、使われるときもあるけど、それが、私たちの知っている「それ」と同じなのか、よくわからない。

この物語は、この見知らぬ、世界を舞台に、はじまる。

【第一幕/ファーレ 旅立つ】

ここは、とある田舎の一軒家。
その家で暮らす、1人の女の子。彼女がこの物語の主人公、ファーレである。
「ソ」「ラ」から生まれたファーレには親はいない。

彼女を世話しているのは、レッサーパンダ先生。

レッサーパンダ先生は、ファーレに熱心に音楽を教えている。
ファーレの声には才能があると、レッサーパンダ先生は言う。

しかし、ファーレには、生まれつき「ファ」と「レ」の音しか存在しなかった。

だからファーレには、音楽がバラバラの、チグハグに聞こえるし、もちろん歌を自由に歌うこともできない。

ファーレは、自分のそんな体質や、世界の常識に疑問を持っていた。
なんで「ファ」と「レ」しかうたえないの。
なんでわたしだけ「ソ」「ラ」から生まれたの。
なんでおしりは丸いの。なんで太陽はわれているの。
なんでなんにも知らないの。いつか全部、わかる日が来るの。

ファーレの疑問を、唯一、受け止めてくれるのは、ファーレの友達、ポリ夫。
神出鬼没なポリ夫は「ン」しか話さない。
ファーレの疑問を否定せず、ただ「ン」と同意してくれる。

そして、ある日、ファーレは、レッサーパンダ先生から、真実を告げられる。
ファーレは「ソ」「ラ」から生まれたのではなかった。ファーレにも親がいた。
レッサーパンダ先生は、赤ん坊のファーレを見つけ、世話をしているうちに、愛情が芽生えてしまい、ウソをついていたのだ。

思わず、家を飛び出すファーレ。

ひとりぼっちのファーレは、自分が覚えている最初の記憶である「子守唄」を口ずさむ。
それは「ファーレ、ファーレ」と彼女の名前を呼びかける、「ファ」と「レ」しか音のない、ファーレがうたえる唯一の歌。ファーレの母親が歌っていたのだろうか。

ファーレは、まちへ出て、親を探すことを決意する。

旅立つファーレに、レッサーパンダ先生は、手ぬぐいを渡す。
その手ぬぐいは、赤ん坊のファーレの首元に巻かれていたもの。
隅には「ファーレ」の刺繍がしてあった。

レッサーパンダ先生に大きく手を振りながら、ファーレは新世界へと旅立つのだった。